検査所見

<生化学的検査>

脳腱黄色腫症では,27-水酸化酵素の活性低下による生化学検査異常が認められる(図1).最も重要なのは血清コレスタノール高値であり,本邦ではSRLで測定可能である.本邦で実施した全国調査における脳腱黄色腫症患者(全例成人)の血清コレスタノールの平均値は21.1 ± 10.5 μg/mL(5.8~49.6 μg/mL)であった6)(健常者の平均値 ± SD: 2.35 ± 0.73 μg/mL,SRLのデータ).海外の複数の多数例の検討でも乳幼児(2.9~5.0歳)を含む全例(130例)で血清コレスタノールの上昇が認められている8,9,11-13). 本症患者では尿中への胆汁アルコール排泄増加も認められるが,現在本邦で臨床検査として測定可能な検査施設は存在しない.

<画像検査>

MRIで両側性に小脳歯状核,淡蒼球,皮質脊髄路,小脳脚,脳室周囲白質にT2強調像やFLAIR画像で高信号,T1強調像で低信号を認めることが本症の特徴である(図2A).病変の出現頻度は,脳室周囲白質が20%~100%,歯状核が63%~79%,皮質脊髄路が33%~86%,淡蒼球が5%~86%と報告されている6,8,19,34).さらに,ミエロパチーを呈する症例では,頚髄~胸髄の側索および後索にT2強調像高信号を認める場合がある(図2B)27,28).腱黄色腫もMRIを用いることにより定量的な評価が可能である.また,理学所見やMRIで腱黄色腫が明らかでない患者において,67Gaシンチグラフィーで微細な黄色腫が検出された報告もある28)

図2 脳腱黄色腫症患者のMRI所見 (A)脳MRI FLAIR画像(Yoshinaga et al. Intern Med 53: 2725-2729, 201435)より転載).小脳歯状核,皮質脊髄路,淡蒼球,脳室周囲白質に高信号を認める.(B)脊髄MRI T2強調画像(吉長恒明,関島良樹.神経内科 86:368-373, 201736)より転載).頸髄後索および側索に長軸方向に長い高信号を認める.

<遺伝子検査>

脳腱黄色腫症の原因遺伝子は,CYP27A1遺伝子であり,患者は変異をホモ接合体または複合へテロ接合体で有する.これまでに50種類以上の変異が報告されており,ミスセンス変異が65%,ナンセンス変異が20%,欠失・挿入変異が16%,スプライス変異が18%を占める37).日本人では,c.1214G>A (p.R405Q), c.1421G>A (p.R474Q), c.435G>T (p.G145=)の頻度が高い6).現在までのところ,明らかな臨床型と表現型との相関は見いだされていない.CYP27A1遺伝子以外の原因遺伝子は知られていない.